看護師のセリフを考察

医療ドラマではガンと診断された患者が診察室を出たあと、看護師に向かって「私の病気は本当に治るんでしょうか?」と不安げに聞くシーンをみかけることがあります。
そしてその質問に対して看護師役の主演女優が笑顔で「大丈夫です。ちゃんと治りますよ。」と言って患者を安心させるシーンも医療ドラマのあるあるです。

しかし実際の病院でこのような会話が交わされることはほとんどありません。
医療の分野では、ガンが治るという状態を明確に定義することが難しいからです。

たとえば手術で腫瘍を取り除くことができたとしても、目立たないところにガン細胞が転移していて数か月後に再発することがあります。
健康を脅かすくらいのガン細胞は無くなったとしても、再発の可能性のあるガン細胞が潜んでいる状態は、治ったとは言えないのです。
また数か月にわたって抗ガン剤治療を続け、ガン細胞を退治することができたとしても、抗ガン剤治療の後遺症が残り入院前のような日常生活が送れなくなることもあります。
この状態では医師や看護師はガンを治すことができたという印象を持つかもしれませんが、日常生活に不自由さを感じている患者は、まだ病気と闘っているような印象を持つのです。

このようにガン治療にはさまざまな解釈があるため看護師が患者に向かって「治りますよ。」と軽々しく明言することは基本的にありません。
現実世界では「治りますか?」の質問に対して再発の可能性や抗ガン剤が身体に与える影響についての説明がなされることでしょう。
看護師のセリフで患者の不安が払拭されるのは、あくまでもドラマ上の演出だといえるのです。